(2015/08/11 11:00更新) ボストンからソルトレークシティーに向かっていたデルタ航空DL1889便が8月7日、飛行中に野球ボール大のひょうに襲われました。操縦席の窓がひび割れるなど被害が発生しましたが、パイロットは緊急事態宣言を行い、無事デンバーに緊急着陸したとのことです。(写真はトラブルに遭遇した機体)

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Eddie Maloney氏撮影
飛行中の米旅客機がひょう被害、機首損傷などで緊急着陸(CNN) 2015/8/9
米大手デルタ航空は9日まで、ユタ州ソルトレークシティーへ向かっていた同社の1889便が激しい雷雨の天候下でひょうに襲われ、操縦士席の窓ガラスに多数のひびが入り、機首部分が損傷する被害を受けたと報告した。
被害は7日夕に発生したもので、米東部ボストン発の同便はコロラド州デンバーの国際空港へ緊急着陸を強いられた。同空港の報道担当者によると、着陸後、乗客の1人が病院へ運ばれた。
Aviation Herald誌では詳細が報じられています。以下、その翻訳を掲載します。(航空用語については下記に「記事を読み解く用語集」を掲載しているので参考にしてください)
Incident: Delta A320 near Denver on Aug 7th 2015, hail strike 2015/8/8
ボストンからソルトレークシティーへ向かうDL1889便として運航されていたデルタ航空のエアバスA320(乗客125名、乗務員5名)は、8月8日の20時10分(現地時間)にデンバーの約220km(120海里)東を高度約10,000m(FL340)で飛行中、激しい乱気流に襲われた。この際、ひょうと雷によって操縦席の窓が両側ともヒビ割れ、更に気象レーダーも機能しなくなった。そのため、パイロットは上記のトラブルを報告した上で緊急事態を宣言し、デンバー国際空港へ行き先を変更することを決定した。

地上の救急隊員もDL1889便の到着に備え、怪我人の手当ができるように待機したが、デンバー滑走路への最終進入中の段階ではパイロットは「搭乗者に怪我人は確認していない」と報告していた。また、操縦席の窓にヒビが入ったことで視界が確保できなかったため、進入段階でILSアプローチをリクエストした。デンバーの管制は空港のILSクリティカルエリアに障害物が存在しないように手配を行った。

DL1889便はデンバー国際空港の滑走路35Lに無事着陸した。34,000フィートから下降し始めて40分後の事だった。管制は「本当によくやった!」とコメントした。(略)
航空機はレドーム、操縦席の窓、エンジンが損傷していた。

記事を読み解く用語集
・気象レーダー…雲の状況を確認するため、飛行機が内蔵しているレーダー。機首の先端のドーム状の部分(レドーム)内に装備されている。
・ILSアプローチ…視界に依存せず、計器着陸装置(ILS)によって着陸する方法。通常は霧などの悪天候時に用いられる。
・ILSクリティカルエリア…ILSを使用するため、障害物を排除する必要のあるエリア。ILSは電波を使用するものであり、電波障害防止のためにこのようなエリアが設定されている。
・滑走路35L…滑走路番号は方角に基づいて表記されたもの。(参考)「L」は左側にあることを示す。
レドーム…レーダードームの略。機首部分の気象レーダーを保護している。

Flightradar24による飛行記録画像を見ると、デンバーに目的地を変更して着陸しているのが確認できます。(赤い点線が飛行予定の区間、実線が実際の飛行経路)
 DL1889
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